「世界最大」の炭素排出権取引市場が始動しました。準備は整っていますか?

7月16日、全国炭素排出権取引市場が始動しました。炭素排出権取引とは?なぜ全国統一の炭素排出権市場を創設するでしょうか?この市場開設は、炭素排出需要がある企業に対してどんな影響があるのでしょうか?

01. 炭素排出権取引とは

「炭素取引」は、「炭素排出権(CEA)取引」とも呼ばれ、主に二酸化炭素排出権を商品として取引し、温室効果ガスである二酸化炭素の排出量を削減するために採用されている市場メカニズムのことです。排出量削減が求められる6種類の温室効果ガスの中で、二酸化炭素(CO2)が最も大量に排出されており、この取引は1トンあたりの二酸化炭素量(tCO2e)を計算単位とし、「炭素取引」と呼ばれ、 その取引市場を炭素市場(Carbon Market)と呼んでいます。

 

取引を開始する前に、先ず政府が、各地域の排出削減総量を確定し、これ基づき排出権を各企業に割り当てます。 企業の排出量が、この排出権の限度額を超える場合、市場から排出権を購入することが出来ます。 逆に、企業の排出量が、この限度額に達しない場合、この未達分を市場で売却することが出来ます。 つまり、炭素排出量を限度額以下に積極的に削減することで、新たな価値を生むことが出来ます。

02. なぜ全国統一の炭素取引市場を創設するのか?

中国は二酸化炭素排出量が、2030年にはピークに達すると見ており、2060年までにカーボン・ニュートラルを実現することを目標としています。 全国の炭素排出権取引市場(炭素市場)の創設は、炭素排出量のピークのコントロールとカーボン・ニュートラルの実現を可能にするための重要な政策手段の一つとしています。

全国の炭素市場を運営することで、各地域の枠を超えて企業間で排出権をより活発に流通し、効率よく、また、低コストで排出量の削減を実行することが出来ます。また、社会全体の総削減コストを大幅に減少させることが出来ます。全国の炭素市場が取り扱う炭素排出量は、当初40億トン以上となり、中国の炭素排出権取引市場は、温室効果ガス排出量を取り扱う世界最大規模の炭素市場となります。

03. 炭素市場の取引には誰が参加できるか?

現在まだ炭素取引市場は始動したばかりであり、先ずは2225社の電力関連企業がこの取引に参加しています。 しかしながら、今後炭素取引市場の運営が円滑になり、取引も活発になることで、より多くの業界、及び、企業も取引に参加出来るようになると見ています。生態環境部はす、でに関連業界の炭素排出量の調査を開始し、電力業界のほか、建材、鉱業、鉄鋼、石油・化学、製紙、航空業などを網羅しています。将来、炭素市場の拡大に伴い、企業における省エネ、及び、炭素削減に対するニーズが増えると共に、クリーンエネルギー、低炭素エネルギーを使用する傾向が高まると考えられます。同時に、エネルギー効率を適切に管理し、消費を最適化する必要があります。これらのサービス、及び、ソリューションを提供するエネルギー・マネジメント企業においては、この傾向は大きな事業機会となり得ます。

中国の新しい五カ年計画:エネルギー、建物、施設にとっての意味合い

梁宇、戦略及び業務開拓総監より

今年の両会(lianghui)の大きなアジェンダの一つとして、今後5年間の新たな経済発展計画が挙げられますが、この中でグリーンエネルギーと二酸化炭素排出量の削減が述べられました。2025年までの主な環境に関する目標として、GDP 単位当たりのエネルギー消費量を13.5%とし、また、CO2排出量を18%削減することが発表されました。中国の専門家によると、これらの目標達成は、昨年政府がコミットメントをした、は2030年に排出量のピークを迎え、その後2060年には、カーボン・ニュートラルを目指すためのマイルストーンとなります。

具体的な政策実施の概要は示されませんでしたが、国家排出量取引スキーム(ETS)を開始するなどに、すでに年初からいくつかの進展が見られました。この計画では、長期的な排出量の上限については触れられていませんでしたが、だからと言って、将来もそのような上限が定まらないとは言えません。 この上限が定まった場合、エネルギー使用量の30%近くを占めている産業・商業分野に多大な影響を与えます。

すべての人が2025年に注目:ボトムアップ政策のロールアウトに備える

今後の5年間は、過去の5年間と同じく、中国の各省や都市が国家目標を達成するためにそれぞれ異なるアプローチを取る可能性が高いと思われます。過去5年間、このようにボトムアップ方式で各省がその目標を達成するため、着実に計画を実行し、また、時にはドラスティックな施策も実施されました。企業は、今後5年間も過去同様の動きに備える必要があります。実際、アント・ファイナンシャルのような一部の主要企業は、すでにこのような動きに備え始めています。

まだ不明な点が多々ありますが、企業や施設管理者には幾つか取りうる選択肢があります。施設管理者と建物の所有者は、今後明らかになる政策に今から備えておくことが必要になります:
以下、今後に、向けた施策の例:
• デジタル・ツールを使用し、エネルギーとユーティリティをより適切に管理および監視する
• 設備を見直し、より効率的な設備を導入する
• オンサイトでの再生可能エネルギー発電設備や蓄電池設備等の設置

政策や規制のプレッシャーに先んじて、工業・商業用地の持続可能性を高めるためには、投資が必要となります。これら投資は、通常から数年以内での回収となりますが、エネルギー・アズ・サービス。プラン(EaaS)を用いることで、投資を抑制し、初年度から恩恵を受けることも可能です。

具体的な政策が出されなくとも、中国は、生産性の改善と持続可能な経済発展に向かうことは明らかです。特に、昨年以降この傾向は国家レベルで明らかになり、投資家と消費者も意識改革が進んでいます。今後の5年間は、これら消費者や株主などからのボトムアップのプレッシャーが、トップダウンのプレッシャーを上回る可能性もあり得ます。 つまり、未だエネルギーの削減計画が策定されておらず、より透明で持続可能な経営がなされていない企業は、大きなリスクを負っていると言えます

ADENERGY、アジア・クリーン・エネルギー・フォーラムに参加 業界を超えた持続可能な未来づくりについて提言

都市化が進むにつれて

環境への影響がますます重大になっています

  1. 都市の面積は陸地全体の2%しか占めていませんが、CO2排出量は70%を占めています
  2. 世界の33つの巨大都市(人口1000万人を超える)のうち、17の都市はアジアにあります
  3. 2030年まで、巨大都市は43都市に増えますが、そのうち81%(35都市)は、アジアにあります

今週、ADENERGYのCEOであるArnaud Dauvillier氏は、APUEAが開催するアジア・クリーン・エネルギー・フォーラムに参加して、インド、中国、ASEAN、及び、日本からのエネルギー専門家と共に、都市のクリーン・エネルギーの発展の必要性について議論を交わしました

今年フォーラムのテーマ:「ビジョン20/20: 持続可能な未来のための業界を横断するイノベーション」

会議において、Arnaud Dauvillier氏は、エネルギー効率、再生可能エネルギー、及び、スマートシティなどのテーマに関しての情報や意見を共有し、持続発展可能な都市に向けた課題解決に向けて、業界を超えた協力が必要になる点や、コロナウイルスの発生後の新たな取り組みなどについて提言を行いました。

特に、Arnaud氏は、知識共有すると共にあらゆる専門家が協働することが重要である点を強調しました。

都市におけるエネルギー・ソリューション

業界を超えて協業することで、イノベーションを起こします

都市は、そこに暮らす人々だけではなく、建物やビジネスも多様化しています。そのため、エネルギー効率を高めるため、あらゆる部門が協働し、これを総合的に管理することがとりわけ重要となります。

排出量を削減することは、政府だけの責任ではありません

特に不動産関連事業者は、重要な役割を果たす必要があります。例えば、ビルの管理者は、ビルの付加価値や入居率を高めることに集中するだけでなく、施設運営やメンテナンス費用、また、エネルギー消費量の削減にも配慮すべきです。

皆で共同することが重要です

すべての建物、資産、企業は、エネルギー管理と公共サービスのコストと品質を最適化する必要があります。 持続可能な都市開発のためには、都市の政策、規制、インセンティブ制度などを深く理解する必要があり、また、最新のテクノロジーと豊富なプロジェクト管理の経験やスキルが求められます。 つまり、益々多くの企業が戦略的パートナーとして、これら専門性を有する企業と共同することが必要となります。

人工知能は、環境とエネルギー消費の管理にも革新性をもたらします

稼働率、効率指標、ユーザーの快適さなどをリアルタイムに計測すると共に、過去のデータに基づいて建物の中央空調、照明、電力などを自動管理するシステムは、すでに実現しています。 今後はさらに、地域や都市全体の建物をモデル化し、建物と都市のエネルギー消費等を最適化するインテリジェントなシステムを構築することも可能になります。

コロナウイルスにより、働き方も変わっています

ほとんどの企業では、従業員が一緒に企業の文化に触れ、また、業務効率を高めるために、物理的に同じ職場で仕事を行っています。 しかし、今回のコロナウイルスの流行により、多くの人々が、徐々に仕事の仕方を変えてきており、リモート・ワークが次第に主流になりつつあります。つまり、建物オーナーにとっては、テナントの従業員が、より健康的でより良い環境で勤務できる環境を提供することが、特に重要となります。

バーチャル・ツイン・テクノロジーの活用により、柔軟な環境をつくり上げることが出来ます

現代のオフィスにおいて、環境への要求はますます高まっており、バー・スペースやフィットネス・スペースなど、オフィス・スペースの機能面に対する柔軟性も日々高まっています。 バーチャル・ツイン・テクノロジーにより、実際のエネルギーや設備、また、サービスについての総合的な視野を提供し、様々なシナリオの下での結果をシミュレーションし、エネルギーや設備、サービスの最も合理的な組み合わせを得ることができます。

都市開発と環境保護は相互に逆説的ではなく、都市開発の過程において、あらかじめエネルギー効率の最適化管理を行うことが重要です。また、ビジネス、生活、およびその他の関係者のすべてに安全であり、且つ、高利率的な運用を行うことも重要です。 ADENのクリーン・エネルギー・ソリューションにより、運用コストの削減とエネルギー効率を改善し、また、都市の生活の質を改善しながら、再生可能資源を効率的に使用した持続可能な開発と環境保護を実現することができます。